久米正雄『父の死』から見る、太郎山

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前回は久米正雄「父の死」の一節に登場する千曲川について話した。今回は太郎山について話す。次の文は久米正雄「父の死」の一節である。

「その年の春は、いつもの信州に似げない暖かい早春であつた。私共の住んでゐた上田の町裾を洗つてゐる千曲川の河原には、小石の間から河原蓬がする/\と芽を出し始めて、町の空を穏かな曲線で画つてゐる太郎山は、もう紫に煙りかけてゐた。」

上の文にあるように、千曲川から太郎山を見ることができた。「町の空を穏やかな曲線で画つてゐる太郎山」という表現の通り、青く広がる空を太郎山が区切っているように見える。また、私が行ったのは冬でありこの文の季節とは合わないものの、「もう紫に煙りかけてゐた」という表現は太郎山の色彩を良く表現していると感じる。

「紫に煙りかけてゐた」という表現が早春の太郎山を表すように、夏、秋にはまた別の見え方・表現があるだろう。日常になってしまい意識することはあまりないが、一年を通して見え方を変える美しい山々に囲まれていることは、大きな魅力であると改めて気づかされた。

参考資料
久米正雄『父の死』(1916,底本:「ふるさと文学館 第二四巻 【長野】」ぎょうせい1993(平成5)10月15日初版発行),青空文庫,
https://www.aozora.gr.jp/cards/001151/files/49280_34317.html (2026年1月17日閲覧)

登録日:2026-01-22 投稿者:すのう
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