蚕都と越屋根

越屋根(こしやね)は、養蚕が盛んだった蚕都・上田の町並みの中で多く見られた建築様式で、蚕を育てるために工夫された家屋の特徴をよく表している。主屋の屋根の上に、もう一段小さな屋根を重ねた形が特徴で、養蚕農家の住宅として用いられてきた。この越屋根は、蚕室の通気や採光を良くするための構造であり、蚕の成長に適した環境を整える役割を持っていた。蚕は温度や湿度の変化に弱いため、自然の風や光を取り入れやすい越屋根は、機械に頼らず環境を調整するための知恵だったといえる。建物のつくりそのものが養蚕のために考えられていた点に、蚕都ならではの工夫が表れている。越屋根は、蚕業が人々の生活に深く入り込んでいたことを示す存在でもある。生産施設ではなく住居の一部として蚕を育てていたことから、蚕都・上田では、養蚕が日常生活と切り離せない営みであったことが分かる。越屋根は、蚕都の歴史を建築の視点から伝える重要な要素である。

登録日:2026-01-21 投稿者:M
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