北向観音

北向観音は、平安時代初期の天長2年(825年)に、比叡山延暦寺の慈覚大師円仁によって開設された霊場であり、上田に残る歴史的建造物の中でも特に古い歴史を持つ。安和2年(969年)には平維茂によって整備され、多くの堂や坊が建ち並ぶ寺院として発展したが、寿永元年(1182年)には源平争乱の中で焼失している。その後、源頼朝の命により復興が進められ、建長4年(1252年)に北条国時によって復興された。

北向観音堂の最大の特徴は、本堂が北を向いて建てられている点である。日本では珍しい右向きであり、本尊の千手観音菩薩は現世利益を願う存在とされてきた。一方、南向きの善光寺は来世での救いを願う寺であり、両方を参拝することで現在と未来の幸せを願う「両詣り」の考え方が生まれた。

現在の北向観音は、信仰の場としての役割を保ちながら、御開帳などの行事を通して多くの参拝者を集めている。こうした点から、北向観音は建てられた当初の目的を受け継ぎつつ、現代においても人々と結びつき続ける、上田の歴史的建造物の特徴をよく表しているといえる。

登録日:2026-01-20 投稿者:asitaka
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