端山貢明のソシアル・ダイナミクス論
「端山貢明アーカイブ」を先日、ネットに新設しました。
端山貢明(1932-2021):作曲家・メディア研究者
またその概要を伝えるチラシを作成しました。端山さんの業績を端的に要約し
●現代の要請に基づく知識循環の創造
●作曲からネット・ムセイオンへ
と伝えました。
「ネット・ムセイオン」は黙示録的なものです。端山さんの言葉を用いれば現代に求められる「知性媒質」です。端山さんが提起した人類が希求すべきメディア環境の概念ではありますが実体はありません。
「知識循環の創造」は、端山さんが提起し続けた「生得の権利」の実現、「アクセス側の主体性」の重要性、そして「ネット・ムセイオン」、これらの先に未来の地平のように見えているのが「知識循環」の社会の姿です。
先日、メディアアーティストのある方から「端山さんのソシアル・ダイナミクス論はどこにあるのですか?」と問われ、「それはありません」とお答えしました。しかしそれは単純な回答であって、ないわけではないが集成されていない、と補足しました。
本来的に端山さんはコンピュータメディアによる社会の変動、変革の方向性に主眼を置きつつ、それも包摂した「ソシアル・ダイナミクス」の探求を第一のミッションと考え、取り組んできました。それがあまりに包摂的すぎて、集成することのないままに終わったと思います。
端山さんの足跡をたどってみると、コンピュータメディアに限らず、関わった仕事は多岐にわたります。特に経産省や国立科学館など国の官庁や文化施設等、企業や地域コミュニティなど、政策立案を主目的とするブレインとして、あるいは社会を励起化する伝道師として、ソシアル・ダイナミクスを自ら実践した関わりが強く、論としての集成はないものの、各所に種まきしたこと、そこに残した記録から端山貢明のソシアル・ダイナミクス論は再構築できるのではないかと考えています。その辺りのアウトプット、言い換えると、今まさに現代が求めている「チェンジの法則」「社会のイノベーション」の原論が、端山さんの社会への知識・知恵の「種まき集」に秘められています。
端山さんのアウトプットを見ていくと、1993年、東北芸術工科大学の教授に就任する頃に御自身の「ソシアル・ダイナミクス論」は頭の中では集成されつつあったことがうかがわれます。しかし大学での教職を得たこと、学生の学習支援に意を尽くしたこと、併せて地域社会の励起化に貢献する知識の種まきをしたこと、そちらに労力がとられ、アウトプット化するに至れなかった面は否めません。言い換えると、そこで個々に発言したことの「事ども」にソシアル・ダイナミクスの本質論があるという見立てができます。それらも端山黙示録と言えます。
私が現在取り組んでいる「デジタルコモンズ」はそれらを内包・包摂した概念として提起するものでもあります。d-commons.netはささやかながらネット・ムセイオンを具現化したサービスです。端山さんが東北芸術工科大学にいた頃に発していた社会への課題の提起は、現在においてもなお新しく、まるで現代の社会に対して提起しているかのようです。言い換えるとこの30年間、社会がさほど変わらなかったことの証とも言えます。
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投稿者 | ミッチー |
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