養蚕農家の生活12 手伝いを通して一人前に
この桑しょいというのが、自分の力がどれだけあるようになったかを知るバロメーターでした。去年は一わだったのに、今年は二わしょえるようになった。早く兄や父と同じくらいしょえるようになりたいものだと思ったものです。
桑束三ばをしょえるようになったのは、6年生の夏蚕の時でした。今日こそはと桑束をしばる「すがい」を三つ持って山の畑に行きました。父と同じくらいの束三ばを作り、背負子につけました。つけ終わったときは、皆帰りかけており、私が一人残りました。腰を下ろして背負子に肩を入れ、さて力を入れて立とうとしましたが立てません。前の桑株にすがったり、あっちこっちとずって歩きようやく足をぶるぶるさせて立ち上がりました。嫌な坂道も注意して下り、石垣の上の細道も気を張って過ぎ、途中の休み場も下手に休んで失敗したら終わりだと思って休まずに帰りました。家の庭に荷を下ろした時は何とも言えませんでした。父は私を見て「ばかやろー」といいました。それは叱ったのではなく褒(ほ)めことばだったです。その後は、三ばを平気でしょえる自信がついたのです。
夏蚕を「じょうぞく」(ヒキを拾って蚕巣に入れる)させた後はすぐお盆になり、ゆっくりとお盆を楽しむのでした。
夏蚕の繭を片付けた後はすぐに秋蚕、晩秋蚕と続けて飼うので、子供の我々は春、夏のように手伝う必要はなかったけれど、「まだ飼うのかえ」と不平を言いつつ、根桑とり等の手伝いをしたのです。
「養蚕業について」西沢吉次郎著より
写真は、塩尻小学校郷土資料館所蔵の背負子
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投稿者 | やまさん |
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