養蚕農家の生活7 蚕の世話
桑をくれるのは1日に大ぐれは3回ですが、群れ直しで少しはくれるので5回ぐらいになったでしょうか。稚蚕の時は、割に湿気に強いのでトタン箱内で飼い、桑葉のしなびるのを防ぎましたが、大きくなると冷湿をきらうなどといい、蚕座(さんざ)(さんざ:食い残りのかす)が厚くなると蒸れる危険があるので、蚕(こ)尻(じり)(こじり:蚕の糞)取りも三齢、四齢にはちょいちょいやりました。その際、よく見ないと蚕をうっかり捨てることになりました。
庭起きになり蚕を下に放すときは、畳の間は全部畳を片付け、座敷、茶の間、勝手土間…軒下、蚕室、裏の物置と人間が寝る部屋とお勝手を残し、全部が蚕の放し飼いに使われたのです。床上にもみ殻をまき、その上に石灰をまいて蚕箔上の縄網(なわあみ)(蚕の上に網をかけ、その上に桑を乗せると蚕は、桑を食べに網の上に昇ってくる)に乗っている蚕を網ごと床上に通路を残して並べるのです。並べ終わるとそれぞれの間の桑くれは無言のうちに分担が決まり、私は一番少ない裏の物置を選びました。丁度、庭起きの期間は小学校の農事休みとなって、蚕飼いの手伝いがよくできたのです。放したばかりの蚕は3センチぐらいのしわだらけの虫ですが、これからは桑をどんどん食べて5,6日もたてば子供の手の中指ほどになるのです。蚕座は、30センチほどに盛り上がります。
「養蚕業について」西沢吉次郎著より
写真は、塩尻小学校郷土資料館より。蚕は、蚕棚から床におろされており「庭起き」になっている。
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投稿者 | やまさん |
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