富士山研究

富士山研究

「富士山の“世界遺産登録までの歩み”と“これから”」
入月龍輝
黒田蒼士

 日本人の自然観や日本文化に大きな影響を与えてきた富士山は2013年に「信仰の対象と芸術の源泉」として、世界文化遺産に登録された。

―世界遺産登録までの歩みー

富士山を世界遺産とする動きは1992年からスタートしている。その後も静岡・山梨両県が、衆参議院に富士山を世界遺産として推薦していった。しかし、2003年国の検討会が最終候補地を選定した際、富士山が狭い遺産候補から外れる。そのため、世界文化遺産登録を目指し活動することになる。2007年に文化庁が日本の世界文化遺産 暫定リスト 追加候補遺産に選定する。最終的に2013年第37回世界遺産委員会にて世界遺産登録決定となる。

 このように世界遺産登録までに約20年かかったおり、一筋縄ではいかなかったことが伺える。また、世界自然遺産として“落選”してしまった理由は主に2つ挙げられる。➀「成層火山の典型例であること」、➁「ゴミやし尿による環境の悪化」がある。

➀「成層火山の典型例であること」について
― 同じような形の山が日本だけではなく、世界にも多くあり自然美や景観美、
独特な自然現象の顕著な例ではないとされている。また、もう1つの理由とし
てかなり類似した他の世界遺産が先に自然遺産として登録されていたことも
ある。ニュージーランドにあるトンガリロ国立公園が、「氷河によって形成
された地形と火山地形がみられる稀有な地」として自然遺産に登録。さらに、
1993年には文化遺産としても登録され複合遺産となった。どちらにも良さは
あるが、類似したものは自然遺産的価値が認められなかった。

※ニュージーランド トンガリロ国立公園
➁「ゴミやし尿による環境の悪化」
― 1960年から観光開発が進み、国内外から多くの登山客が訪れるようになり、
その弊害として登山客のポイ捨てが頻発している。捨てられたプラスチック
類やガラス片などは自然の中で分解することができないため、富士山に住む
多種多様な野生動物のいのとぉ脅かす存在として危惧されている。また、下
水処理機能が十分に追いついておらず、トイレの数が不足している。2000年
前後から対策が取られているが、いまだにトイレの少ない範囲もある。気温
の低い富士山では糞尿が分解しきれずに残ってしまう可能性があり、これら
も生態系に悪影響を及ぼすとして懸念されている。


―これから―

 世界遺産に登録されたことで世界的な認知度が上がり、国内外問わず多くの観光客が訪れるようになった。日銀甲府支店は全体で推計194億円の経済効果があると発表した。しかし、その一方でごみ問題は、以前よりかは改善されているものの未だに十分な対策をとれていない。富士山は世界遺産登録時にイコモス(ICOMOS)から「保全状況報告書」という環境保全策の提出を求められており、三保高原の除外や名称の拡大などの改善が求められた 。今までに2件の世界遺産取り消しの例がある。そのため、日本の富士山も問題に真摯に向き合って対策を続けていくことが重要である。



画像は「阪急交通社/『世界遺産|トンガリロ国立公園-ニュージーランド』」から転載
https://www.hankyu-travel.com/heritage/newzealand/tongariro.php

登録日:2022-01-27 投稿者:そーし
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