地域メディア活性化のための提案

地域情報メディア論の講義を受けて考えた、地域メディア活性化のための提案を、私の最終課題としてアウトプット化していきたいと思います。

はじめに、私が現在の地域メディアの課題として感じるのは、地域メディアは利用者が限定されてしまっているという点であると考えます。地域メディアという言葉を聞いて真っ先に思い浮かぶことは、そもそも興味をもちにくい媒体であるという事です。地域メディアの例としては地域資料館や市町村史がありますが、どれも元から地域に興味を持っている人や地域について調べようと思っている人の目にしか留まらない媒体であると感じます。地域と人とを繋ぐための媒体であるのに興味がある人しか利用しない、そういった意味で地域メディアは利用者が限定されていると思います。特にその傾向が強いのが、地域資料館であると感じます。例えば、自分が住んでいる地域について何かしらの情報を必要とする状況に置かれている人や、もともと地域について興味がある人であれば、必然的に地域についての情報が保管・展示されている地域資料館に足を運ぶでしょう。しかし地域についての興味や関心がない人が、歴史的にたいへん有名な展示物ではない、地元の人すら知っているかわからない情報が展示された地域資料館に行ってみたいと感じる可能性は限りなく低いのではないでしょうか。

地域資料館という地域メディアの利用者が限定されてしまう原因は、先述したように地域への興味や関心に起因していると考えます。地域について知りたいという気持ちがないから、地域の情報が展示・保管されている地域資料館に行かないという考えに至るのではないでしょうか。しかし、自分の興味や関心が向かない事柄に対しては手を付けないというのは至極当たり前のことで、それは仕方のないことだと思います。しかし「じゃあ興味や関心がない地域メディアに目を向けるのは無理だからなにもしなくていいよね」ということではないと思います。地域メディアは地域と人とをつなぐ架け橋です。地域メディアの衰退は地域の衰退を意味します。地域の衰退を防ぐため、ひいては地域復興のためには地域メディアの活性化が必要であると私は考えます。

では地域資料館が、多くの人が訪れる施設に生まれ変わるためにはどうすればよいか、私の考えは至ってシンプルです。地域資料館に興味や関心がないなら、興味や関心を持ってもらえばよいのです。その為にメタバースというデジタル技術を利用する方法を考えました。具体的には、メタバースというデジタル技術を利用して仮想空間の中に地域資料館をつくるというものです。そもそもメタバースとは仮想現実のことであり、近年では新しい体験を可能にするツールとして注目を集めています。メタバースは主に3Dゲームやコミュニケーションツール、バーチャルオフィス(現実の店舗をバーチャル空間で展開すること)の提供など、さまざまな用途に利用されており、現実世界ではできないことを可能にする仮想現実の技術として多くの可能性を秘めています。そんなメタバースで、自分のアバターを介して自由に資料を閲覧して回ることが出来るようなバーチャル資料館をつくる、これが地域資料館という地域メディアを活性化させるための私の提案になります。

メタバースを利用したバーチャル資料館には大きく分けて3つのメリットがあると考えます。まず1つ目は、この提案の目的でもある、多くの人に興味や関心を持ってもらいやすいという点です。近年ではメタバースを利用したコミュニケーションツールなどが多くあり、世界中のたくさんの人が仮想空間の中での交流を楽しんでいます。もともとメタバースはゲームの技術のとして利用されていたものであるので、エンターテインメント性は十分にあると感じます。現実世界とは違う仮想空間の世界を、自分のアバターを介して自由に動き回れる、これほど好奇心をそそられるものは他にない、唯一無二のツールです。そういった意味で、多くの人に興味や関心を持たせるにはうってつけではないでしょうか。

2つ目のメリットは、場所の制約に縛られない点です。現在も猛威を振るっているコロナ禍の影響で、様々なイベントが感染拡大防止の観点から中止されてきました。それに伴い展示会やライブイベント、セミナーなどのオフラインイベントがオンラインイベントに代替される機会が増えたと感じます。オンラインイベントは、パソコンやスマートフォンなどのデバイスとインターネット環境さえあればどこにいても参加が可能です。それはもちろんメタバースも同様であり、ネットワーク上に構築されたメタバースでは、物理的な場所の制約を受けることなくイベントの開催や参加が可能です。加えて、アバターを介したコミュニケーションによって、身振り手振りを交えた非言語コミュニケーションが可能になるのです。これもメタバースならではの利点であると言えます。

3つ目のメリットは地域学習に適しているという点です。小・中・高等学校では、自分たちが住んでいる地域についての理解を深めるための総合学習があります。私が小中学生の頃にもそういった授業があり、地域についての座学や地域探検などの学習をおこなった記憶があります。しかし、地域学習について改めて思い返しても、興味や関心を持って自分から能動的に学ぼうと思ったことはないと感じます。もう何年も前の記憶なのでおぼろげにですが、学校の授業だから仕方なく「学ばされている」という感覚が強い印象でした。地域についての知見を広げるために地域資料館へ行くという学校もあると思います。しかし生徒側に興味や関心がなく、ただ学ばされている状態のままでは、せっかく地域資料館へ行く機会があっても地域学習としては何の意味もありません。学びは自分から興味を持って楽しむ気持ちがなければ、知識として定着しないと感じます。私が提案するバーチャル資料館を体験することで、地域学習に楽しさを見出すことができると考えます。それは結果的に、現実世界に実物として存在する地域資料館へ足を運ぶきっかけになるのではないでしょうか。

ここまで私が考えるバーチャル資料館のメリットを述べましたが、もちろんデメリットも存在します。それは、仮想空間のバーチャル資料館には参加するかもしれないが、実際の資料館には足を運ばないかもしれないという事です。今回私が提案したメタバースを利用したバーチャル資料館は、地域資料館への興味や関心を多くの人に持ってもらい実際の地域資料館へ足を運んでもらうことを最終的な目標としています。バーチャル資料館はあくまで、地域資料館への導線としての役割が強いと考えています。私の理想とする形は、バーチャル資料館から実際の地域資料館までがセットです。それが、バーチャル資料館で興味や関心が止まってしまう可能性が高く、そうなると私の提案の意味がなくなってしまいます。このデメリットの原因は、バーチャル資料館のメリットでもある場所の制約を受けないことに起因しています。デバイスとインターネット環境さえあればどこからでもバーチャル資料館にアクセスが可能なので、わざわざ実際の地域資料館へ行かなくても簡単に閲覧ができるわけです。

この問題の解決方法は、地域資料館の方にもデジタル技術を使用することだと考えます。正確に言えば、展示を見るのが楽しい地域資料館にするという事です。バーチャル資料館に参加することで実際の地域資料館への興味や関心がほんのわずかでも生まれると思います。この時点でバーチャル資料館の目的である実際の地域資料館への興味や関心を持たせることには成功しています。そこからは地域資料館へ足を運んでもらうためのプロセスに移ります。地域資料館をバーチャル資料館と同等かそれ以上に魅力的だと感じさせるための方法ですが、私が考えたのは拡張現実を利用した展示方法です。拡張現実とは現実の風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示するというものです。数年前に世界的なブームとなったスマートフォンゲームにもこの拡張現実が使用されたことで有名です。スマートフォンを向けると目の前の風景の中にモンスターが現れ、まるで現実世界にモンスターが存在するような感覚になり、ゲームへの没入感が高まります。このデジタル技術はゲーム以外の用途にも応用されており、拡張現実を使ったスマートフォンアプリが多く登場しています。

拡張現実を利用することで、地域資料館の展示を、無機質なものから、見ているだけで感情溢れる展示にできると考えています。例えば、展示品のそばに貼られたQRコードをスマートフォンで読み込むことで、画面上に展示品が表示され任意の角度から見ることができる、展示品の歴史が浮かび上がり視覚的な楽しみをより感じられるなどが挙げられます。また、バーチャル資料館と地域資料館をリンクさせる(バーチャル資料館でのアバターを地域資料館の拡張現実に表示させるなど)ことで、実際に足を運んでもらえる可能性をより高めることもできると思います。

 以上が、新しい可能性に溢れるデジタル技術を駆使して、地域資料館に興味や関心を持ってもらうための私の提案になります。繰り返しになりますが、私が考えたメタバースを利用したバーチャル資料館の目的は、利用者が限定されてしまう地域資料館に足を運んでもらうことです。バーチャル資料館はその導線であると考えています。そして、拡張現実を利用した展示で実際の地域資料館を楽しんでもらうまでが私の理想とする形です。ではこの提案を実際に行えば、地域についての興味や関心を引き出せるのかと問われればそれは難しいと思います。地域資料館(地域メディア)の活性化は一筋縄ではいかない難しい課題だからです。なら仕方がないと思考停止するのではなく、一人ひとりが思考をやめないことが地域メディアの活性化に繋がるのではないかと思います。そして地域メディアの活性化は地域の活性化に繋がります。この地域と人との繋がりを絶やさないようにすることが重要であると改めて感じました。

登録日:2022-08-10 投稿者:日本人
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