ザザムシ、信州昆虫食調査を通して
さて、信州の昆虫食レポートの最後を飾る食材はこちら。「ザザムシ」。私は長野県に来るまでこの食材を知らなかった。ザザムシとは伊那市にのみ残る伝統的な昆虫食だそうで、以前は長野県全体で食べられていたものの、残念ながら上田氏にはザザムシ漁の文化は残っていないらしい。今回ばかりは伊那市のレポートになってしまうのだが、それでも調査によって発見したことや気づきがあったので共有したい。改めてザザムシとはトビケラ、カワゲラ、ヘビトンボなど、川虫のうち食用にする幼虫の総称である。天竜川で最も「ざざむし漁」が盛んで、天竜川漁業組合が許可した漁師でないと漁を行うことができない、れっきとした産業である。山国である長野県では動物性タンパク質の確保が難しかったが、伊那市では川魚屋がザザムシを採集し、加工販売していたことから、農閑期の主要残業の一つとしてザザムシ漁が重宝されていた。
現在では10人程度しか漁を行う人が居らず、ザザムシ漁がなくなるのも時間の問題かもしれない。しかし、幾世代をまたいで現在もこうしてザザムシを食べる機会があり、若い世代が新商品を開発しているのは、実際にザザムシが美味しいからである。
実食した感想だが、ザザムシの佃煮は香ばしく、エビのような風味を感じる。イナゴとはまた違った食感で、癖になる味わいだ。
最後に信州の昆虫食を調査して得た感想であるが、昆虫食は人間が自然から直接享受できる食文化の一つであり、自然環境が悪化したり、条件が極度に変動すると供給が不安定になる。昆虫食に注目することは、同時に自然環境に注目することでもある。また、昆虫食自体が伝統文化になっているケースもあり、そこから着想を得て新たなアクティビティへと昇華することもできる。前時代的と思われた文化は、むしろ新時代への架け橋となるかもしれない。
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投稿者 | ONODERA |
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