上田の蚕糸業~衰退を防ぐには

日付: 作成者:じゅ

上田のみならず全国で蚕糸業の衰退が進行しており、それをどのようにして止めるかを信州上田デジタルマップの記事を通して考えていく。

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上田市の養蚕業の発展と今

上田市の養蚕業の発展と今

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なぜその探求テーマを選んだのか
1年生の時、常田館製糸場を訪れ、蚕の製造方法や過去から現在までどのようにして衰退していく養蚕業を守り続けてきたかを学び興味を持った。

何を探求しアウトプット化するか
蚕の衰退原因とそれをどのようにして解決するかを探求し、常田館製糸場のように蚕を使った現代アートを作り、現代に繋げるといった活動などをどのように広めるかの案を考える。

具体的にどのような資料を調べるか
上田市公文書館ネットなどの資料や実際に聞いた話を参考に様々な視点から調べる。


1.上田の蚕糸業を選んだ理由

1.上田の蚕糸業を選んだ理由

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皆さんは信州上田の蚕糸業についてどのぐらいご存知でしょうか?

私は正直、1年生の前川ゼミで常田館製糸場を見学するまでは具体的に蚕という虫を知らず、むしろ虫は苦手なので興味は全くありませんでした。
しかし、常田館製糸場を訪れてからは蚕にとても興味を持ち、蚕の製造方法や蚕の糸を使ったアートなど、蚕を知らない方にも興味を持ってもらうために上田の蚕糸業を選びました。

現在、蚕関連の産業は上田のみならず、全国で衰退しています。

 
この記事を通して蚕について知ってもらい、全国で衰退している蚕糸業を守っていきたいです。


2.上田市の蚕の歴史

2.上田市の蚕の歴史

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信州上田では江戸時代から蚕の卵の生産で栄え、その後も養蚕、製糸業などさまざまな発展を遂げていき全国から「蚕都上田」と呼ばれるようになりました。

しかし、現在は様々な理由から蚕糸業は全国で衰退し、風前の灯火となっています。

衰退している蚕糸業ですが、上田地域でもまだ蚕糸業は残っています。

上田地域で有名な蚕関連の会社は常田館製糸場という会社。明治33年(1900年)に創業された製糸工場です。

蚕糸業は大きく分けて蚕種業、養蚕業、製糸業の3つに分けられ、蚕の卵を生産し、質を高める「蚕種業」、蚕を成虫まで育ててそれを管理する「養蚕業」、蚕の繭から糸を取り生糸に加工する「製糸業」に分かれます。

次の記事では蚕という虫について解説していきます。

今の若い人は蚕という虫に接点が全くないので少しでも興味を持っていただけると幸いです。


3.蚕(カイコ)という虫について

3.蚕(カイコ)という虫について

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今回のテーマである蚕糸産業では蚕という虫が欠かせない存在です。そんな蚕について解説していきます。

長野県民の方なら授業で習う機会もあるらしいのですが、県外出身の私は授業などで習ったことはなく、名前だけしか知りませんでした。

蚕(カイコ)という名前は知ってるけど、どういった虫かはあまり知りませんよね。

カイコは別名カイコガ(学名:Bombyx mori)
チョウ目カイコガ科に属する昆虫です。

蚕は自然界に存在しない虫で、遥か昔に家畜化された虫なので人間が世話をしないと生きていけない虫なのです。

何故、世話をしなければ生きていけないのか
・幼虫の頃は脚が弱く、葉にくっつけないから。
・成虫になり、羽があるのに一切飛べないから。

蚕の起源
5000年前の中国で東アジアに生息するクワコという蛾の一種を糸として利用したかった中国人が、より糸を吐く個体同士を交配し、誕生したのが起源とされています。

卵から孵化した蚕は桑(くわ)の葉を食べ、約1か月後に口から糸を吐き、繭(まゆ)を作ります。
繭の中で蛹(さなぎ)になった蚕は2週間程で繭を破り成虫になります。
しかし、成虫になってからは何も食べずに異性と交尾をし2週間ほどで死にます。

蚕のような蛾は口がないことが多く、成虫になってから飲まず食わずで役目を果たします。

蚕は成虫になると繭を破ってしまうので蛹の状態で繭ごと煮沸し、蛹を殺して綺麗に繭を取り出します。

1匹が繭を作るために吐く糸の長さは1000mから1500mあり、長い1本の糸で形成されています。

現在、日本で使われている絹糸のほとんどは海外から輸入されたものです。

蚕という虫について紹介しましたが皆さんはどのくらい蚕について知っていましたか?

次の記事では何故、日本の蚕糸業が衰退し、風前の灯火となっているのかを解説、考察していきます。


4.蚕糸業が衰退している原因

4.蚕糸業が衰退している原因

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江戸時代から明治時代まで信州上田を支えてきた蚕糸業はなぜここまで衰退してしまったのでしょうか。

衰退した原因は幾つもあるので紹介していきます

原因①和装の需要が低下

日本は古くから和装が常識でした。特に江戸時代から明治時代は和装の市場も大きく、それに伴って原料である生糸はとても需要がありました。

しかし、明治時代を越えると次第に洋服の需要が増えていき、和服の需要は一気に低下しました。和服の低下と共に蚕糸業も衰退していきました。

原因②海外の生糸を輸入※絹糸・・生糸を加工した糸

日本が近代化していくにつれ、海外、特に東南アジアで大量生産された安い生糸を加工し、絹糸にする方が国内の蚕糸を使うよりも安く大量に仕入れられるため、海外の生糸の方が需要が高くなってしまいました。

その結果、日本の絹糸が以前よりも売れなくなってしまったのです。

輸入当初は東南アジア生産の絹糸よりも日本の絹糸の方が質が良いことから日本の絹糸も親しまれていました。

しかし、近年では技術が進み、東南アジアの方でも大量生産でき、日本産にも引けを取らない質の絹糸が生み出され、さらに日本の絹糸の需要は減り、蚕糸業に大打撃を与えました。

原因③生産者の高齢化

蚕糸業は生産がとても難しい上に利益率が低い産業です。
また、3の記事で書いたように蚕という虫は人間の管理がないと生きていけません。卵の段階では冷蔵室で温度管理を行い、幼虫~成虫まで人間が一つ一つの工程を管理しないといけないのです。

近年の若者は特に虫と接点がなく、上記で書いた蚕を育てる難しさもあり、蚕糸業を継ぐ後継者があまりいないことが原因の一つです。

このまま原因を放置し、策を講じないと自然と蚕糸業は消滅していきます。

若者に蚕糸業を知ってもらうことが蚕糸業を後世へ残していく鍵ではないかと考察しました。


5.蚕を使ったアート

5.蚕を使ったアート

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私は常田館製糸場を訪れた時、鉄骨繭倉庫には絹糸を使ったアートが沢山並んでいました。様々な種類のアートが展示してあり、絵のようなものから立体なアートまで若者が興味を持ちそうな作品が沢山展示してありました。

近年、InstagramやTIKTOKが文化の流行を促しており、それを利用している年齢の層は若者です。

そういった若者をターゲットに普段、馴染みのない蚕を知ってもらう機会を設けて蚕という文化に触れてもらうといった策で蚕糸業を活性化しようと考えました。

次の記事では蚕を若者にどうやってアピールするかを考察していきます。


6.若者に蚕を知ってもらうには

6.若者に蚕を知ってもらうには

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これまで蚕について様々なトピックを紹介してきましたが、蚕糸業の衰退を止めるためには若者の力が必要不可欠です。

若者に蚕を知ってもらうための策を幾つか考えました。

5の記事で紹介した蚕糸を使ったアートを通して蚕を知ってもらう策。

近年、SNSの普及に伴い若者の影響力が絶大的な権限を得ています。日本の世の中の流行は若者のスマホの中から始まっていて、何気ない投稿がその年の流行を決めるとも言われています。

SNSに蚕を使ったアートを載せたり、アリオやサントミューゼなどの大型施設で展示会をするなど人の目に触れさせるようにしなければならないと感じました。

蚕の飼育を流行にする案。

蚕という虫は品種改良されたため、人の管理がないと生きられません。そのデメリットを逆手にとって若い人が蚕を飼育しやすいように飼育キットを販売し、蚕に触れてもらうという考えです。

蚕は全体的に白く、丸いことから虫の中でもダントツで可愛いです。また、羽が生えていますが飛べないので脱走の危険性もなく2週間という短期間で寿命を終えます。
そして繭と卵を残すのでその後の楽しみも味わえるような飼育キットを販売し、蚕を少しでも知ってもらうという考えです。

小学校に蚕の紹介をしに行く案

長野県の小学校では授業で蚕に触れる地域もあるそうです。
私は愛知県出身ですが蚕について学校で習ったことはなく、大学で常田館製糸場を見学するまでは全く興味がありませんでした。
幼少期に蚕に触れることにより、蚕がどのような生物でどういった産業に繋がるのかを学び、蚕について少しでも知ってもらえる機会を増やすのが目的です。子供が知ることによりその親にももしかしたら知ってもらえるかもしれません。

これまでに3つの策を考えましたが、信州上田にあるサントミューゼは江戸時代から明治に上田が蚕都と呼ばれていたことに由来しています。
そんな蚕糸業が栄えていた上田地域ですら蚕を具体的に知っている人はあまりいません。

若者に蚕について少しでも触れてもらう機会を増やすことが蚕糸業を継承していく鍵になると考えます。


7.まとめ

7.まとめ

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参照した一次資料
・http://www.silk.or.jp/kaiko/kaiko_yousan.html
・http://www.kasahara.co.jp/kasahara/tokidakan/
・https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/bunsho/bunka/rekishi/rekishi/gendai.html

私は過去に常田館製糸場を訪れた時の記憶とその後、蚕について調べた情報を元に新たに見聞を深めて「私の地域探求」に蚕糸業のトピックをインプットすることが出来た。これにより以前よりもさらに蚕について理解を深めることができた。

また、「私の地域探求」に取り組み、蚕糸業がどのようにして衰退し、その衰退を防ぐにはどのようにしたら良いかを考えて自分なりに解決策を出せたのが収穫だと考える。
現在、蚕糸業は風前の灯火の状態であり、突発的な蚕ブームが来なければ再興は難しいと考えます。しかし、絹などの美しい文化を保つために蚕糸業をみんなで支えていく必要があると感じました。


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