探求テーマ選択理由:個人的に歴史関連の授業で戦争について学んでいる事もあり、戦争下で生きていた人々の足跡に興味を引かれている。そして先日「西塩田時報」を読んだとき、戦争に関わる内容が多いと感じた。当文献を用いたこの探求テーマなら、自らの興味を満たす調査が行えるのではないかと思ったため。
探求内容:戦前・戦後の人々の生活を表す記事をいくつかピックアップし、自らの所感を述べていく。
調査に用いる資料:「西塩田時報」
戦死した五名の男子。その名前と戦死日時、場所が中央に大きく書かれていた。
この記事における「英靈」とは死者、特に戦死者の霊を敬って言う語を意味していると思われ、「故山」とは彼らの故郷。
つまり、故郷に遺体という形ではあるが再び還ってきた五名の霊を追悼しよう、という心がけが見受けられる。
国のために命を捧げて死ぬのは美徳であり、仕方ないことだという戦前の考え方が薄れてきているようにも思えた。
農村の民主化政策に対して消極的、反動的な意見を排除して意欲的に民主化を進めようと呼びかけた記事。
GHQを中心とした国内改革の成果が見られる記事であるように感じた。
地域の野球・卓球の体育祭典のリザルトを掲示した記事。
戦前ではスポーツをやる余裕など無かっただろうと思うが、こうして大会が開けるまでに平和が戻ってきたということを表す、微笑ましい記事だと感じた。
これから選挙に臨む村民達に、勤勉に働く者が損をしないような社会を作るべく考えて投票を行うことを促している記事。
そのために、どのように投票するのがいいのかを解説しているのがわかりやすく、政治に疎い読み手のことを考えているな、と思う一方、現代では自由な投票を歪める可能性があるのであまり推奨されることではないようにも思う。また、女性の選挙権を求める記事も同時掲載しているのが、差別撤廃を目指す時代性を表していると感じる。
記事発行以前に行われた村議員選挙において、それがいかに非民主的なものだったかということを痛烈に批判している記事。後ろ盾の無い民主団体や個人は不利な状態に立たされ、女性の候補者も一人も現れなかったという状況を、封建的なかつての選挙と変わらないと言っている。
戦前や戦時中ではこのような政治に対する批判は絶対にできなかったと思うので、自らの意見を自由に発信できる時代の訪れを感じた。
明治憲法(大日本帝国憲法)が改正されたのは、憲法をポツダム宣言に沿う内容にしなくてはならなかったからだと主張している記事。改正後の憲法がポツダム宣言に準じているということを、実際にそれぞれの条文を比べることで示している。
日本を愛する人民として、新憲法とポツダム宣言は理解しておくべきだという主張が、当時の政治への意欲を表しているように感じた。
学校の野球・排球用のユニフォーム調達のための寄附結果を掲載、お礼している記事。
スポーツに対する協力体制が感じられ、スポーツが村民にとっても娯楽的に親しまれていることがわかった。
その名の通り、現代日本において知られるようになってきた用語を紹介している。外来語についても紹介している。
今の私たちにとっては身近な言葉も、こうして徐々に浸透していったんだということがわかり、面白いと感じた。
戦後の生活を見る事例の一つとして今回調査を行ったが、歴史の教科書には載っていないような、終戦後立ち直っていく住民の姿がありありとみることができた。
具体的には、GHQが取り組んだ民主化が地方にも広がっていたことや、政治参加への意欲が現代よりかなり高かったことがわかり、良い学びになったと思う。
[参考資料]
『西塩田時報』Vol.2(戦後編1946~1956)ページごとの画像(https://d-commons.net/uedagaku/detail.php?id=3622) みんなでつくる信州上田デジタルマップ 信州上田学アーカイブ