文楽『本朝廿四考』を観る

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国立劇場

2022/12/06、国立劇場小劇場に文楽を観に行きました。前回の文楽鑑賞は05/20、『競伊勢物語』を国立劇場小劇場で。2022年は2回ながら文楽を観る機会に恵まれました。

国立劇場が建て替わるということで現在の国立劇場のさよなら公演が続いています。これもさよなら公演の一つ。初日に行ってきました。

『本朝廿四考』は中国の『二十四孝』にならい、本朝(わが国)の孝行に優れた人物を採り上げた物語という意味合いかと思います。その詮索はともかくとして、奇想天外で度肝を抜く物語でした。

歴史上、信州でたびたび戦いを繰り広げた上杉謙信と武田信玄、武田信玄の子武田勝頼、上杉謙信の知将・山本勘助、信州の武将・村上義清らが歴史上の人物というよりは、自由に創作された物語上の人物と化して都合よく登場してきます。勝頼がいきなり切腹するという物語の展開も奇想天外ながら、実の勝頼は農民として生きている蓑作であるというどんでん返し。そこに勝頼との婚姻の約束をしながらまだ対面したことのない八重垣姫が登場し、その情念が物語を動かします。凄まじいばかりの情念ゆえに自身を狐と化してしまう展開には唖然とします。妄想にとらわれる『さまよえるオランダ人』のゼンタを彷彿とさせます。八重垣姫はゼンタをはるかに凌駕しています。物語の舞台が信州の諏訪になっているのも意外。謙信や信玄や勝頼や山本勘助などが登場する物語の恐ろしいほどのご都合主義、濡衣と称する人物、などなど。

『二十四孝』にならいながら、当時の忠君が何事にも優先する価値観には文楽が庶民の娯楽であるとは言え、「いかがなものか」と思わざるを得ません。勝頼の妻・濡衣が刎ねられた首になって現われた時にはギョッとしました。倫理的・道義的には上演禁止として扱うのが当然の「非道」な物語です。

一事が万事、あっけにとられ続けた物語展開でした。劇の作者でもある近松半二らのエンタテイメント性を遺憾なく発揮した作品と言えます。正直なところ、これまで観た文楽の演目の中で最も強いインパクトを受けました。

登録日:2022-12-12 投稿者:ミッチー
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