現代に繋がる主導的産業の偏移について

 幕末の開港によって長野県は地域経済を世界につなげることになった。そこで長野県を国外まで広げる一翼を担ったのは生糸でした。
 長野県は外国との交流が始まると、器械製糸を取り入れ、養蚕や蚕種業の技術開発や改良に力を入れました。それで、蚕糸王国と呼ばれることになったわけです。長野県の近代のあゆみは養蚕や製糸業の盛衰に左右され長野県の命綱は、蚕糸業であったと断言して過言ではありません。
長野県の製糸業は県外や外国にまで進出し、日本の製糸の中心となります。なので、長野県内のいたるところの農家では養蚕が営まれました。
 蚕糸業は大正時代から昭和初年にかけて全盛期を迎えますが、1929年(昭和4)からの世界大恐慌の影響をうけ、製糸業を営む会社の倒産が相次ぎ、繭価の価値の大暴落のため生活を養蚕に左右されていた養蚕農家も大打撃をうけます。不況から抜け出すため、県は満州(中国東北区)移民を積極的にすすめ、全国一の送出県になります。

(余談ですが我が地元ではとある地域の人たちは長野県から満州に行って財産を失って帰ってきた可哀そうな人たちだ、国や県からの甘い言葉に騙されちゃいけないと老人たちが言い伝えています。) 

 長野県の蚕糸業を発展させた要因に、蚕業教育の充実をあげることができます。小県蚕業学校(現在の上田東高校)や上田蚕糸専門学校(現在の信大繊維学部)は全国にさきがけて開校されています。
 一方で、製糸業の発展にはやはり負の面もあり、工女たちの労働・賃金・生活条件などの問題をうみだし、改善を求めた運動もおこります。
 1945年(昭和20)、第二次世界大戦の終戦を機に、日本は民主主義の国として再出発することになります。戦争による荒廃のなかから、新しい社会を創造する動きが、県下各地でもはじまりました。
 1960年代にはじまる高度経済成長によって、県下でも商工業が飛躍的に発展します。長野県は戦前から養蚕・製糸業に代えて精密機械工業へと産業育成の重点をうつしていましたが、戦後の長野県は「工業立県」の目標を掲げ、工業課を新設し、工場誘致条例を制定するなど、工業化政策を進めます。かつて長野県製糸業の中心であった岡谷・諏訪地方は、精密機械工業の中心地として発展し、「東洋のスイス」と呼ばれるようになっていきます。
 農山村では農業基盤整備や機械化がおこなわれましたが、都市部への人口流出により過疎化も進みました。また産業の発展は一方で自然破壊や環境汚染をもたらしました。

参考資料:信州の歴史 近現代   閲覧日2022年8月6日
https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/bunsho/bunka/rekishi/rekishi/gendai.html

以上のことを踏まえ結論を急ぐと、我が地元、中津川は時代により主導的産業が製糸業から製紙業に移り、現在では電気機械工業へと遷移していっていた。また、現在に繋がる電気機械工業にて主力となっている工場群は元をたどれば第二次世界大戦中に疎開してきた軍需工場に端を発するものが多く戦中の疎開先に選ばれたことが、近代に多大な影響を与えていることが分かる。
ここまで我が地元の主導的産業について述べたが上記の長野県上田市の状況も振り返ると同じように戦前は蚕糸業を主導的産業としていたが、戦中に軍需工場や民間工場を広大な蚕糸業に使われていた土地を利用することで受け入れ、次第に主導的産業を精密機械工業へと移していっている。
この事から、中津川も上田も蚕糸業によって戦前は栄えたが、恐慌を受け、世界の情勢や経済への依存が大きく価値が左右されやすい蚕糸業から、次代を見据えた産業への偏移を行おうとしていた矢先に戦争がおき、疎開先に選ばれたことが現在に繋がる主導的産業の発達に繋がったという共通点が見られる。
これらの事から分かるのは、結局蚕糸業によって稼いでいた額は違えど、蚕糸業によって栄えた地域は既に蚕糸業を行っていた土地を再利用し蚕糸業によって蓄えた体力や教育基盤を基に主導的産業を機械工業に移しており、現代では蚕糸業の友愛会のようなものがその歴史を称えているのみとなっているという事だ。
私はかつて地域を支え、地域の体力や教育基盤を整える金と時間を齎し、次代の産業へ移り変わり消え去るともその遺構を再利用され地域の未来を支える礎となった蚕糸業こそ真の最優の地域産業であったと断言したい。

登録日:2022-08-10 投稿者:2626二村
ハッシュタグ
(キーワード)
    ライセンスこのライセンスは原作についてあなたに対するクレジットの表示を行う限り、あなたの作品をリミックスし、改変し、あなたの作品を使って新しい作品を作ることを許すものです。これはもっとも懐の広いライセンスです。ライセンスされた資料の流通・利用の最大化のためにお勧めしています。 表示(BY)
    投稿者2626二村
    管理番号7
    カテゴリ名その他
    トップにもどる
    地図で見る
    情報を探す
    キーワード
      同じキーワードを持つ記事