養蚕農家の生活5 はきたて 

 桑の芽がほころび始めるころはどこの家でも稚(ち)蚕(さん)飼育室の用意をしました。5月はまだ寒く、稚蚕のためには温度25℃を保たなければなりませんから、温度の取りやすい部屋を選びます。よく拭き掃除をし、周りや天井に目張りをし、使う道具もよく洗い、室内、道具をホルマリン消毒します。もうこんな時期は桑の芽は4葉ぐらいに伸び、いよいよ蚕(さん)種(しゅ)は催(さい)清(せい)(さいせい:温度をかけて蚕が卵からふ化するようにする)が終わって、今まさに蚕の稚児が卵から出ようとするときに、蚕(たね)種屋(や)は農家に売り渡すのです。
私の家では暖がよくとれる部屋がなかったので、二つ休み(蚕が生まれて2回目の脱皮のあと)までは下の家の稚蚕室へお願いし共同で飼育しましたが、室内には大きな火鉢が据えられ、上等な堅炭を焚いて温度をとりました。
蚕種屋から届いた種紙は1枚に28匹のガが卵を産み付けたもので、1枚の卵量は約6g、これを私の家では10枚買いました。卵量60g、1gの卵から出た蚕が大きくなって繭になったときは600~700匁(もんめ)(もんめ:3.75グラム。650匁で約2.5㎏)になるので、私の家では春蚕で繭40貫(かん)(かん:3.75㎏。40貫で150kg)を目標にしていたことになるのです。(夏蚕、秋蚕、晩秋(ばんしゅう)蚕(さん)で60kg)
卵から蚕が出てそれに初めて桑をくれ、蚕座(さんざ)にはき落とすことを「はきたて」といいます。その時のほうきには鳩の舞羽で作ったものを使います。
「養蚕業について」西沢吉次郎著より

登録日:2021-11-15 投稿者:やまさん
地区コード上田市
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    カテゴリ名養蚕農家の生活
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